あいちスマートサスティナブルシティ共創チャレンジ インタビュー(yaotomi×南知多町×愛知県庁×ICMG)

2021.09.17

あいちスマートサスティナブルシティ共創チャレンジ インタビュー(yaotomi×南知多町×愛知県庁×ICMG)

「あいちスマートサスティナブルシティ共創チャレンジ」は、愛知県庁、シンガポール国立大学及びICMGが共同で実施する愛知県のスマートサスティナブルシティの実現を共創によって目指すプログラムです。2020年度より始まり、2021年度は、2期目となります。
今回は、昨年度実施の振り返りとしてCHALLENGE3「南知多町をモデルとした世界・都市・地域に生きる新たな生活モデルの創造」に応募・選出された株式会社yaotomiの犬飼さん、チャレンジオーナーの南知多町役場の堤田さん、そして愛知県庁の森さん、またここにCHALLENGE3の責任者を務めたICMG佐藤を加えた、4名に座談会方式でインタビューさせていただきました。

 

左から、南知多町 堤田さん、yaotomi 犬飼さん、愛知県庁 森さん、ICMG 佐藤

―ではまず最初に犬飼さんにお聞きします。このプログラムに参加しようと思ったきっかけを教えてください―

犬飼:yaotomiは、愛知県の知多半島を拠点にして、有機野菜、菜の花やヒマワリの種から作る油、そしてその油から作る化粧品を三本柱に、生産から加工、販売まで行う6次産業化を進めてきました。でも農地というのは、お金を払ったからといって自由に購入できるわけではないんです。認可がなければ自由に扱えないので、どうやって行政機関と連携を深めていきながら事業を進めていくかということはずっと考えていました。
愛知県スタートアップ推進課の情報はいつもチェックしていたので、南知多町が(このプログラムに)参加することを知って、これはやるしかないと思いました。(笑)

―そこから、南知多町にはどういった内容を提案されたのですか?―

犬飼:有機農業を推進していくことで耕作放棄地や空き家の増加など南知多町の抱える課題の解決にもつながるという提案です。次の4つのプランからなっています。

  1. 新規就農者を定着させるためのインキュベーションセンター
  2. 生産した野菜を流通するための大手量販店と連携したプラットフォーム
  3. 学校給食での利用
  4. 野菜のブランディングを高めるための機能性の成分分析

簡単に説明すると、新しく農業をしたいという人間を募ろうとする時には、どうしても移住・定住という話になります。移住するとなると住むところが必要ですので、空き家の活用というところにもつながります。そして、新規就農ってやはりハードルがあるんです。なので、それをサポートする為のインキュベーションセンターが必要だなと。さらにそこで生産した野菜の販路となる大手量販店さんとの連携や野菜の価値を高めるための機能性表示ということで名城大学と連携しての成分分析など、産官学の共創で有機野菜を拡大していくことで地域の課題を解決していけないかということになります。

―犬飼さんからの応募をいただいた時、堤田さんや役場の方の反応は如何でしたか?―

堤田:私はその当時防災安全課で老朽化によって倒壊のおそれがあるなど危険な空き家への対策を担当しておりましたが、空き家対策の課題は、老朽化する前にいかに空き家を活用していただくかということです。そのため、空き家をどう使ってもらうかとなると、一番は移住ということになりますが、移住するには仕事がいります。かたや、農家の減少や耕作放棄地、遊休農地の問題もありました。犬飼さんは、既に南知多町で耕作放棄地に菜の花を植えて油を作るなど、6次産業化したビジネスを拡大していく取り組みを実際に進めていましたので、これはやるしかないと思いました。

また他に頂いた提案の中にも農業関連(スマート農業、体験型旅行)の内容がありましたので、そこともつなげられたら面白いということで、本当は選出できる提案は3件までだったのですが無理を言って4件にして頂きました。(笑)

―少し被るかもしれませんが、どのような点が選出のポイントになりましたか?―

堤田:そうですね。一つは、地元のスタートアップだったというのもあります。やはり地元の企業が頑張っているところをなんとかしたいという思いもありました。でもそれ以上に、様々なステークホルダーとの連携が広がっていく可能性を感じました。例えば、学校給食での利用です。南知多町では、ちょうど給食センターを新設している最中だったので、有機農作物を活用した食育にも使えると思いました。日本では、有機農作物の市場規模は、まだ成長途上ですが、欧米では、小さいころから「オーガニックは環境によい」ということを学び、消費していることが背景にあることから、非常に大きな市場規模になっているようです。そのため、サスティナブルシティの実現に当たっては、環境面と経済面の両方の観点として非常に重要だと考えました。

また一番はインキュベーションセンターのアイデアですね。新規就農者がyaotomiの農地を使用して、作付から販売までサポートを受けながら事業化までしていくというプランは、地域産業の強化と耕作放棄地の解消につながりますし、さらに移住・定住の促進にもつながります。そして、大学と連携して有機野菜の成分を分析して機能性表示もすることによってブランド価値を高めることまで考えられていて、提案の完成度が非常に高いと感じました。

犬飼:いまある地域資源だったり人材のネットワークを活かして、「みんなが笑顔になる」方法はないかと常日頃から考えるようにしていました。行政との連携というのは、応募する時点でyaotomiに足りてないパーツだったんです。

堤田:持続的に地域を発展させていくには、地元企業と連携して官民共創でやっていくというのは必要不可欠だと思います。そこをこのプログラムが上手くつないでくれたと感じています。すでにそういった(官民をつなぐ)プラットフォームを持っている自治体もありますが、どう作っていくかが課題だと思います。また「社会課題を潜在的な資源として提供する」といった内容に対して、南知多町に国内外の29社からビジネスモデルの提案が来たというのは奇跡だと思いました。このプログラムで得た知見を官民共創のためのプラットフォームづくりに活かしたいですね。

―yaotomiの産官学の連携や有機農業を起点とした地方創生の提案をみた時の県庁の皆さんの印象は如何でしたか?―

:愛知県は、自動車産業や航空宇宙産業など製造業が盛んなことで知られていますが、全国有数の農業県でもあります。例えば、キャベツの作付面積は全国1位ですし、花の産出額も1位なんです。農業の発展も県の重要なテーマですので、今回の提案はとても意義深いものだと捉えています。

―共創期間中の活動は如何でしたか? もし苦労された点などがあれば教えてください。―

犬飼:愛知県の実施するプログラムの中で南知多町と有機農業を推進していくというyaotomiの提案が選出されたということで対外的にもアピールできる効果がありました。公的機関と正式に協力しているということで、やはり受け止められ方が変わりましたね。大手量販店さんにも伝えたところ、非常に良いイメージを持ってもらえて、提案を話しやすい状況になりましたね。

―共創チャレンジの仕組みを活用することで、プランがブラッシュアップにつながったことなどがあれば教えてください。―

犬飼:移住・定住策の部分を行政機関と実際に検討できたというのが大きかったですね。新規就農者が空き家を活用するにしてもどこにあるかもわからないですし、家主さんに空き家の活用状況を聞くというようなこともなかなかできません。そこを南知多町との意見交換を経て、空き家バンクなどの移住・定住策と連携したプランにブラッシュアップすることができました。他にも知見やノウハウもそうですが、やはり行政機関の方との連携で得られる信用感が違います。話しを進めるにも、スピード感が全然違いますね。

またICMGの佐藤さんに、頭の中にあったアイデアをビジネスプランとして具体化してもらえたのはとても助かりました。南知多町側との連携も効果的に進めていただき、DEMODAYまでにスピーディにプランとしてまとめあげることや、合意形成をしていくところで貢献をしていただきました。

佐藤:ICMGでは、「共創期間」がこのプログラム全体の肝だと考えています。チャレンジオーナーとパートナーだけではなく、様々なステイクホルダーのリソースを掛け合わせることで提案が更にブラッシュアップされるように工夫をしています。南知多町×yaotomiのケースでは、お互いに関連する4つのプランが含まれていましたので、全体としてどう1つの提案にまとめ上げるか、またそれぞれのプランの合意形成を進めるところに力点を置かせてもらいました。

「ICMGの役割は何ですか?」という質問もよくあるのですが、「共創を前に進めるために、何が必要なのかを見極め、サポートする」というところにあります。スタートアップ側からチャレンジオーナーに言いにくいことをいうことをあれば、またその逆もあります。チャレンジオーナー側の社内(庁内)調整を支援することもします。チャレンジオーナーとスタートアップのマッチングは、あくまでもスタートであって、戦略を共に描き、実現に向けてチームの一員として深く関わらせていただくということを大切にしています。

堤田:yaotomiさんから提案時にいただいた内容を基にしつつも、プログラムの中の対話内容を踏まえて、だんだんとバージョンアップしていくことができました。今回のチャレンジを通して、官民で手を取り合える関係性が作れたのが一番良かったと思います。

:また、犬飼さんには県庁にも来て頂いて、県の有機農業の担当とつないだりさせて頂くなど愛知県のネットワークを活用して共創につながるサポートをさせて頂きました。

―森さんは、DEMO DAYの最終発表をご覧になってどういう印象を持たれましたか?―

:提案された4つのプランが具体的に連携していて、見事に結実したと思っています。有機野菜を小中学校の学校給食に採用する、インキュベーションセンターで新規就農者を支援するなど、地域のサスティナビリティにつながるプランで、「スマートサスティナブル共創チャレンジ」にぴったりの内容だと思いました。また連携先が具体名で上がってきた。イオンさんや名城大学など、ここまでやられているところは他にはなかったですね。今後のさらに発展していく様子を是非共有して欲しいです。

※Demo Dayでのプレゼンテーション

堤田:今年の6月に学校給食での利用が実施されました。次は秋以降になりますが、「食育」としての情報発信も強化していきたいと考えています。また、機能性表示食品に関する勉強会も開いています。地元で消費するものは極力地元で生産したものという「地消地産」の方針もありますので、科学的根拠に基づいて安全性と機能性が示された野菜を子供たちに食べてもらいたいですし、観光業への活用にもつなげていけたらと考えています。有機農業を移住・定住につなげるところでは、農政担当と役割分担をしながら、新規就農者を育てるインキュベーションセンターのプランも検討しています。

また庁内に関わる大きなところでは、本チャレンジをきっかけとして2月に全職員向けに官民共創の必要性に関する勉強会を開催し、4月には官民共創を業務内容に明記した「まちづくり推進室」が新設されました。共創チャレンジの他の提案であるQlueとの連携協定の他、民間企業2社との連携協定も予定するなど、共創チャレンジをきっかけに色々な取り組みが加速する流れになっています。企業から何か話があれば、すぐに断るのではなくまず聞いてみようという動きになってきており、本チャレンジをきっかけとして南知多町役場としての組織文化も変わってきたかなと感じています。

―本年度の抱負や、スタートアップへのメッセージはございますか?―

:このプログラムでは、イノベーションにフォーカスして「スタートアップによる新たな産業の創出」と「県内企業とスタートアップとの連携による既存産業の強化」という狙いがあります。スマートサスティナブルシティというものに関心のある国内外のスタートアップに是非応募して欲しいです。採用された提案には、ICMGさんの伴走支援があって共創を促進して頂けますし、愛知県庁が有するネットワークもご活用いただけます。

―本プログラムを共同で運営するICMGとして伝えたいことはありますか?―

佐藤:ICMGでは、オープンイノベーションや共創といった取り組みについて、本当に「コトが起きる」ためにはどういう条件が必要なのかを徹底的に研究しており、本プログラムにもそのノウハウを注ぎ込んでいます。「本気」のスタートアップの皆さんの期待には必ず応えていきますので、熱い想いを持った方と今年もまたユニークで価値ある取り組みを生み出していきたいです。

―それでは最後に犬飼さんから、今年度、共創チャレンジへの参加を検討している方々にメッセージをお願いします。―

犬飼:相手に何かをやってもらえると期待するのではなく、掴みに行くという気持ちであれば本当に良いきっかけだと思います。何よりも対話の場がセットされている。これが大きいですね。その場を作るのが本当に大変で。普通に窓口に行っても相手にされないことが多いですからね。(笑) 提案をしっかりと検討してもらえるこのようなチャンスはラッキーだと思います。我々としては、非常に大きなメリットがありました。ぜひご関心をお持ちの方は、応募してみることをおすすめします。

皆さま、どうもありがとうございました!


参考

Aichi Smart Sustainable City Co-Creation Challenge

愛知県内の企業や団体と国内外のスタートアップとの共創により、愛知県における”スマートサスティナブルシティ”の実現を目指します。3つのチャレンジテーマが設定され、チャレンジオーナーと共に、テーマとして設定された課題解決に取り組みます。
https://aichissccc.com/

株式会社yaotomi

愛知県の知多半島を拠点として、有機野菜(有機JAS認証取得)や菜の花、ヒマワリの種から作る油、そしてその油から作る化粧品の三本柱で身体の中と外から健康になってもらえる暮らしを提案している。生産から加工、販売までを一体化しておこなう6次産業化を進める農業地域商社です。
https://www.yaotomi831.jp/

南知多町

愛知県知多半島の最南端に位置し、半島の先端と沖合に浮かぶ篠島・日間賀島等の島々からなっている。都市地域への生鮮な魚介類を供給する魚の町・漁業の基地、海水浴や天然温泉が楽しめる観光地である。しかし、愛知県内で最も空き家率が高く、2018年に総務省が実施した調査では空き家率が21.6%に達している。また、同町が2016〜2017年に全建物を対象に行った実態調査によると、町内の空き家候補は990軒。そのうち、老朽・危険なものは77軒あった。
https://www.town.minamichita.lg.jp/


【ICMG Groupについて】

ICMG Groupは、創業20年以上に渡り、東京、シンガポール、バンガロール、サンフランシスコ、上海、ストックホルムをベースに、日本大企業のトップマネジメントへのコンサルティングサービス、ベンチャーキャピタル、CVC、デジタル、プロダクトデザイン、リーダーシッププログラム、再生可能エネルギー、脱炭素事業をグローバルで提供しています。また、東京電力・中部電力と再生可能エネルギーや次世代インフラへの投資を行うジョイントベンチャーをシンガポールに設立しており、国連UNDPとは、SDGsイノベーションに関するパートナーシップを締結しています。ベンチャーキャピタルでは、Sequoia CapitalやGoogle、Tiger Global Management等のグローバルトップVCとシンガポール、インド、東南アジアで共同投資を行っております。また、日本大企業の経営層の持つパーパス、ヴィジョンをデジタルの力に繋げ、社会のイノベーションを加速する株式会社ICMG Digitalを2023年にローンチし、2024年には、元Microsoft米国本社のDirector of Product Design and Research, Frontline Studios GMであったAna Arriola-Kanadaと日本企業のプロダクトデザインを実行するICMG Nextをローンチしています。これらの多様な価値を創出してきたICMG Groupのコアバリューは、常に企業、組織の見えざる価値を可視化し、将来像(パーパス)を描き、その価値創造を実現させてきた知的資本経営(Intellectual Capital Management)にあります。

【本件に関する報道機関からのお問い合わせ先】

ICMG Group

Group Marketing Department

Call:+810368122511

Email:[email protected]

Website:https://www.icmg.co.jp

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