“イノベーションネーション”と呼ばれるシンガポールには、多様性や熱気があり、オープンマインドな人材が集結しています。そんなシンガポールで、日系企業によるイノベーション活動と数多く向き合っているICMGシンガポールによるインタビューです。今回は日本クロージャー株式会社(NCC)の大久保さんにお話をお聞きしました。
※本記事は過去に取材したものを再編集したものです。文中の肩書・経歴はインタビュー時点。
Profile:大久保 雄祐
Assistant Manager, Product Development Department
日本クロージャー株式会社
2017年より現在所属する製品開発部にて現業の製品開発に従事する傍らシンガポールを起点としたイノベーション活動を開始。現地スタートアップと革新的なパッケージを創出するためのハッカソンや社会課題を肌で体感し課題設定から事業機会の検証を行うためのSDGs プログラムなどを実行し、オープンイノベーションの本質を体得中。2019年には自社の活動をさらに拡大させるため、グループホールディングとしてシンガポール支店を設立する活動にも携わった。現在は出張ベースでシンガポールへの出張を重ね、自社内のイノベーション活動のさらなる発展を目指している。
―大久保さんの勤める日本クロージャー、およびご自身の現在の役割についてお聞かせください―
日本クロージャー(NCC)で、金属キャップの製造・設計、開発の仕事を12年してきました。2〜3年前からは、これらの現業とイノベーション活動を半分ずつ行なっています。
―イノベーション活動を始めた背景とこれまで活動についてお聞かせください―
欧州向けのビール製品立ち上げを担当することになり、海外を飛び回る中で世界を感じ始めました。弊社の社長もこれからは世界を見据えてビジネスしないと生き残れないと考え、社内の風向きも変わっていきました。
今まで、さまざまなプレッシャーを受け、日々忙しく製品開発を行う社員が、私含め多くいましたが、そのような状況下ではなかなか革新的な価値を生み出すことはできないだろうという考えに基づき、シンガポールを切り拓いていきました。新しい取り組みやイノベーション活動への意識の低さに関しては常々危機感を感じていましたが、当時の弊社にはイノベーションを興すための環境が整っていないのが実情でした。過去から革新的な製品を開発することは社内全体で目指し続けていますが、なかなか実を結ぶことはできず、また、新規事業を興すための部署も人員縮小、削減が行われてしまいました。
現在の活動が当社の新価値創造を加速させることに繋げたいと思っていますが、現在も、会社全体としての「変化」はまだまだだと感じています。相変わらず現業ばかりに追われている状況は、大きな課題だと感じています。
―なぜシンガポールに進出したのでしょうか?―
2017年にシンガポールへ来て、「変化を起こせるチャンス」がここに溢れていると、とてつもない潜在力を感じました。これが私自身のターニングポイントとなりました。今まで現業に凝り固まっていた自分を変えていきたい、脱却したいという思いが強まりました。
シンガポールで過ごした約2年のイノベーション活動の中、肌で感じたのは、シンガポールに来てこの国に触れた人は全員と言っても過言ではない程、シンガポールが好きになっています。そこには日本にはあまりないオープンマインドになれる環境があることが大きいように思います。社内ミーティングでさえ、日本で実施するよりシンガポールの方が不思議な程、豊富なアイディアが出てきます。恐らく人々がシンガポールのオープンな環境や何でも受け入れる風土の中、議論に集中できること等がそうさせているような気がしています。
そして、ICMGと協働することで、シンガポールで様々なキーパーソンに繋がり、どんどんネットワーク広がっていっていることは、日本にいる時と比べて圧倒的なメリットに感じます。そういった世界を変えようとしている人との出会いが、自分自身の視座を高めてくれて、視野を広げてくれます。日本では感じられない価値観を得ることも、シンガポールの最大の魅力の一つだと思います。
―シンガポールでの活動の中で感じた困難やモチベーションについてお聞かせください―
シンガポールで活動をしていると、やりたいことが次々に溢れてきます。しかし、どのようにして会社全体を巻き込んでいくか、という大きな壁は常々感じています。きっとどこにいても、新しいことをやろうとする人の足を引っ張り、妨げようとする人はいます。
今回、UNDPとのSDGsに関するプロジェクトをICMGさんと立ち上げたのですが、予算を獲得する過程でも苦労がありました。しかし、今年から参画しているICMGさんのInnovation Platformメンバー向けのセッションに参加した際に、同じくシンガポールで新規事業の立ち上げに注力されている日清紡さんとの会話の中で、「15回断られても、粘り強く16回目にチャレンジしています。そうすると、16回目に理解してもらえる事もあるんです」というアドバイスを頂き、衝撃を受けました。
他社とはいえ、同じ状況下にいる同志・仲間と繋がりは、私にとって大きかったです。そして今は、理解してもらえない相手に対して、「何もわかってないな」ではなく、その価値を上手く伝えることも大切な仕事の一つだと感じています。いかに味方を作るかが、苦労でもあり喜び、楽しさでもあると気づくことが出来ました。
「クロージャーで人と社会に感動を」というモットーを会社として掲げていますが、既存の製品開発の延長線では人を感動させることはできないと思っています。会社として、社会課題に取り組んでいることを、社会、そして世界にみせていくことが大切だと思っています。「社会課題を解決したい」というのが今の私のライフパーパスです。
―シンガポールでの活動を通じ得られた成果はどのようなものでしょうか?―
周囲に対し自分自身の考えを発信することが増えたことが、そのひとつだと思います。自分たちの考えを周囲に伝えることで、相手の意見を得ることが出来ると気づきました。どのような場面でも、オーディエンスではなく常にプレゼンターとして、自主的に行動を起こせています。それにより色々な情報を得ることが出来ています。
例えば2017年、ヨーロッパのエキシビジョンに参加した際、ある欧州企業との繋がりができました。弊社の技術を使い、ボトルからキャップが外れないテクノロジーをヨーロッパに展開していくという本企画は、心踊るとても面白い経験でした。ヨーロッパ・グローバルの先頭をいく企業と繋がることは、欧州市場の情報や技術、それに関するアドバイスをもらえるだけでなく、共同開発の可能性まで生まれるなど、想像を越える可能性に溢れています。そして何より、グローバルで最先端をいく人達との仕事は、常にワクワクします。机の前で仕事を続けていては、現状から脱却することは出来ず、何の「変化」も起こせない。正にそれを実感しました。
ICMGさんは、イノベーションの具体的な実現方法を見いだせていなかった私たちにシンガポールの最前線だけでなく、イノベーションを起こすためのノウハウやナレッジ、ネットワーク等を惜しみなく教えてくれて、気づきを与えてくれる大変有り難い存在です。コンサルティング会社を嫌う会社や人もいるかと思いますが、ICMGさんは異質で、刺激的な高い視座を与えてくれ、シンガポールの価値に気づかせてくれたのもICMGさんのお陰であり、今は強力なパートナーという存在です。
―大久保さん、ありがとうございました―
【ICMG Groupについて】
ICMG Groupは、創業20年以上に渡り、東京、シンガポール、バンガロール、サンフランシスコ、上海、ストックホルムをベースに、日本大企業のトップマネジメントへのコンサルティングサービス、ベンチャーキャピタル、CVC、デジタル、プロダクトデザイン、リーダーシッププログラム、再生可能エネルギー、脱炭素事業をグローバルで提供しています。また、東京電力・中部電力と再生可能エネルギーや次世代インフラへの投資を行うジョイントベンチャーをシンガポールに設立しており、国連UNDP
とは、SDGsイノベーションに関するパートナーシップを締結しています。ベンチャーキャピタルでは、Sequoia CapitalやGoogle、Tiger Global Management等のグローバルトップVCとシンガポール、インド、東南アジアで共同投資を行っております。また、日本大企業の経営層の持つパーパス、ヴィジョンをデジタルの力に繋げ、社会のイノベーションを加速する株式会社ICMG Digitalを2023年にローンチし、2024年には、元Microsoft米国本社のDirector of Product Design and Research, Frontline Studios GMであったAna Arriola-Kanadaと日本企業のプロダクトデザインを実行するICMG Nextをローンチしています。これらの多様な価値を創出してきたICMG Groupのコアバリューは、常に企業、組織の見えざる価値を可視化し、将来像(パーパス)を描き、その価値創造を実現させてきた知的資本経営(Intellectual Capital Management)にあります。
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