里山から考える持続可能な社会と価値創造可能性

2021.06.30

里山から考える持続可能な社会と価値創造可能性

急速な高齢化や人口減少、多発する災害、インフラの老朽化など日本は社会課題先進国といわれています。特に地方に目を向けると「超高齢化」や「労働人口の減少」など錆び行く地域の存在が顕在化しています。その一方で、自然と人の営みが融和した「里山」が再び注目されています。元来、「里山」は、その自然の恵みを活用し、持続可能な開発と利用を循環させることで、地域循環経済や持続的社会を実践してきた歴史があります。そこには、現代の日本が抱えている様々な社会課題を解決するヒントが隠されているのではないでしょうか。今回は、岐阜県恵那市において里山をベースにしたビジネスに挑む2つの企業の事例を紹介させて頂きます。

※本記事は、Future Center Tokyoで2021年6月16日に行われたセッションを基に構成しております。


ケース1:「里山を活用した再生可能エネルギーの取り組み」

小水力発電装置開発により、2020年 日本水大賞において経済産業大臣賞を受賞
有限会社角野製作所(代表取締役社長 角野秀哉 氏)
http://suminoseisakusho.jp/

同社は、わずか30cm幅の水路でも発電できる小水力発電装置『ピコピカ』を製造販売している。元々、自動車部品や航空宇宙部品の加工事業に携わり、高い技術力や量産能力を磨いてきた同社が、再生可能エネルギー事業(小水力発電)へと乗り出したのには、社長の角野氏が幼少期に遊んだ川で感じた「この凄い水のエネルギーを何かに使えないか?」という原体験があったといいます。

角野氏の思いと同社の技術力により開発されたピコピカは、小型のために適地(設置な可能場所)が多く、発電(10w)によって携帯の充電や獣害除けの電気柵、防犯灯への利用等が可能だ。だが、日本ではエネルギーに困ることが少ないこともあり、現在はエネルギー教育を目的として、子供たちに組み立て設置してもらい、通学路を照らす防犯灯の電源としての利用が主たるものだといいます。

一方で海外に目を向けると、10億人以上が無電化の暮らしを余儀なくされています。そのような無電化エリアでの利用のために、同社ではより発電量の大きい500w(平均的な日本の家庭で使われる電力と同規模)の装置『ピコピカ500』も開発している。ワクチンを保管する冷蔵庫での活用など貢献の余地は大きいと考えている。

里山の豊富な水資源の活用に端を発する本装置ですが、その開発には「水利権」の問題が大きな障壁としてあったそうです。同社では、恵那市との協力関係により水利権を獲得し、実証実験を行うことで、本装置の開発につなげたといいます。


ケース2:「里山におけるドローンの可能性」

里山という地からドローンの普及活動、情報発信
株式会社ROBOZ(代表取締役/ドローンAmbassador 石田宏樹 氏)
https://roboz.co.jp/

同社は、恵那市上矢作町を拠点に全国に「ドローンステーション」を展開している。元々は、ドローンと全く接点がなかったという石田社長だが、「ドローンは産業のスタンダードになる」との閃きにより同社を設立したといいます。その為、ドローン自体に注目するのではなく、「ドローンを使って何を生み出すか?」、「ドローンでどう地域を活性化するか?」という視点で常に考えているという。

同社のドローンステーションでは、ドローンの普及活動や依頼による空撮・調査業務などを行っているが、ドローンによる運搬や鳥獣害対策の実証実験を進めるなどドローンの活用の幅を広げることに挑んでいる。上矢作町の小学校では、ドローンを使った授業も行っているという。

また同社はドローンを使った地域の活性化を目指し、イベントを定期的に開催しており、「プログラミングドローンレース大会」や「ドローンレース全国大会」等を実施しています。特に、2021年6月には、上矢作町全体をドローン飛行場とした「ドローン空撮大会」を開催し、大きな反響があったといいます。

飛行規制があり都市部では自由に飛ばすことのできないドローンですが、自治体、地域コミュニティとの連携により、地域に人を呼び込みながら、里山の魅力も伝えていくことで、地域の活性化につなげている事例といえるでしょう。


2つのケースとも、大きく2つの点で共通しています。まず1つ目は、水資源やドローンを自由に飛ばせる場という「里山の資源を活用」するにあたって、「自治体や地域コミュニティと連携」している点です。里山という自然環境にあっても、水利権や飛行許可など様々な規制が存在しており、その活用には官民共創型での取り組みが必要不可欠となります。

2つ目は両社とも「教育」に携わっている点です。未来に向けて、いかに持続的に里山の持てる資源を活用していくのか、また新たなテクノロジーや技術と組み合わせて、どのような新しい価値を創出していくのか、地域のエコシステムとの共創において、教育は象徴的な役割を果たしているといえるでしょう。勿論、それだけではなく将来的に、子供たちが新たな価値の創出の担い手になることも期待されます。

ICMGでは、今後も恵那市をはじめとした地方自治体や地域のリーダーとのエコシステムを形成していきながら、社会課題を解決していくための新たな価値創造を推進していきます。興味をお持ちの方は是非ご連絡ください。

■恵那市について
岐阜県南東部に位置し、愛知県、長野県に隣接している。山紫水明に恵まれた自然に囲まれており、景勝地として知られる恵那峡を始めとした風光明媚な自然、また中山道大井宿などの歴史資源、明知鉄道など、さまざまな観光の要素を持った町もある。

【ICMG Groupについて】
ICMG Groupは、創業20年以上に渡り、東京、シンガポール、バンガロール、サンフランシスコ、上海、ストックホルムをベースに、日本大企業のトップマネジメントへのコンサルティングサービス、ベンチャーキャピタル、CVC、デジタル、プロダクトデザイン、リーダーシッププログラム、再生可能エネルギー、脱炭素事業をグローバルで提供しています。また、東京電力・中部電力と再生可能エネルギーや次世代インフラへの投資を行うジョイントベンチャーをシンガポールに設立しており、国連UNDPとは、SDGsイノベーションに関するパートナーシップを締結しています。ベンチャーキャピタルでは、Sequoia CapitalやGoogle、Tiger Global Management等のグローバルトップVCとシンガポール、インド、東南アジアで共同投資を行っております。また、日本大企業の経営層の持つパーパス、ヴィジョンをデジタルの力に繋げ、社会のイノベーションを加速する株式会社ICMG Digitalを2023年にローンチし、2024年には、元Microsoft米国本社のDirector of Product Design and Research, Frontline Studios GMであったAna Arriola-Kanadaと日本企業のプロダクトデザインを実行するICMG Nextをローンチしています。これらの多様な価値を創出してきたICMG Groupのコアバリューは、常に企業、組織の見えざる価値を可視化し、将来像(パーパス)を描き、その価値創造を実現させてきた知的資本経営(Intellectual Capital Management)にあります。

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